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KAORUN / JAPAN STOCK NOTES

キッコーマンの売上15%増、円換算をそろえると?しょうゆから学ぶ為替の見方

今回の教材:キッコーマンの2027年3月期第1四半期決算。対象は2026年4月1日〜6月30日、公表日は2026年8月5日です。過去の四半期を使い、数字の読み方を考える記事です。記事公開時点の最新決算速報ではありません。

しょうゆを小皿に注ぐとき、為替レートまで気にすることはあまりありませんよね。でも、海外で販売する企業の決算では、同じ商売の成果でも「何円に換算するか」で見え方が変わります。

キッコーマン(東証・2801)のこの四半期は、連結の売上収益が前年同期比15.0%増。一方、会社が示す為替差を除いた伸び率は6.0%でした。どちらかが間違いなのではなく、見ている条件が違うのです。

陶器の小鉢に入ったしょうゆ、2018年撮影
しょうゆの参考写真(銘柄は特定していません)。2018年2月1日撮影、写真:Bodhi Peace/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0。リサイズ・JPEG圧縮のみ、同ライセンスで提供。キッコーマン製品や当期の販売状況を示す写真ではありません。

15%と6%を並べてみる

まずは、連結全体の売上収益について二つの伸び率を比べます。下の図は、前年同期から何%増えたかを表しています。株価のチャートでも、しょうゆだけの売上でもありません。

連結売上収益の前年同期比。円換算15.0%増、為替差を除く6.0%増。0から16%の共通尺度
会社開示の伸び率から当サイト作成。連結実績、2026年4〜6月と2025年4〜6月の比較。共通の0〜16%尺度。出典:決算短信・添付資料2ページ。資料取得:2026年10月30日。
同じ期間でも、条件をそろえると見え方が変わる
連結売上収益会社の開示値
2025年4〜6月175,660百万円
2026年4〜6月202,032百万円
前年同期比の増収額26,372百万円
増収額に含まれる為替差15,841百万円
為替差を除いた増収額10,530百万円

出典:キッコーマン・2027年3月期第1四半期決算短信(表紙と添付資料2ページ/PDFの4ページ目)。百万円未満切捨て。会社の表示値を採用しているため、内訳の合計と増収額には1百万円の端数差があります。

26,372という増収額だけを見れば勢いを感じますが、その中には円への換算で生じた差も含まれています。「為替差を除いた増収」と「換算条件が変わった影響」を分けると、次に調べることがはっきりします。

増収率を見るときは、為替差を除いた数字も隣にメモしてみましょう。比較の条件をそろえるのが第一歩です。

同じ100ドルでも円では変わる

仕組みだけを、小さな仮例で確かめましょう。海外で100ドルの売上があったとします。1ドル140円なら14,000円、1ドル160円なら16,000円。ドルでの売上は同じでも、円で表すと2,000円増えます。

これは計算のための架空の例です。キッコーマンの販売価格・実際の取引・採用レートを表していません。会社が開示した為替差も、この一つの式だけで再現できるものではありません。

海外旅行の予算を円に直したとき、現地で買える品物の数は同じでも、必要な円が変わるのと似ています。ただし企業の決算は複数の通貨や期間にまたがるため、その日のドル円だけを当てはめれば済む話ではないのですね。

さらに、円換算の増収と、手元の現金が同じだけ増えることも別です。円換算の数字を見ただけで「その分を丸ごと利益として使える」と考えないようにしたいところです。

換算の計算例と会社の実績は分けて読むと安心です。きょうの為替レートだけで、過去の決算を説明しないようにしましょう。

6%増は「本数6%増」とは限らない

では、為替差を除いた6.0%増が分かれば、しょうゆの販売本数も6.0%増えたと言えるのでしょうか。そこまでは言えません。今回見ているのは連結全体の売上収益という金額です。販売数量そのもののグラフではありません。

例えば同じ本数でも、価格や売れた商品の組み合わせが変われば売上金額は変わります。連結にはさまざまな事業が含まれますから、しょうゆ一品の人気をこの二本の棒から取り出すこともできません。「換算条件をそろえた」は、「ほかの条件もすべて同じ」とは違うのです。

わさびしょうゆを添えた揚げ豆腐のポケボウル、2023年撮影
しょうゆを使う料理の参考写真。わさびしょうゆは別添え。2023年6月9日撮影、写真:Andy Li/Wikimedia Commons/CC0 1.0。リサイズ・JPEG圧縮。使用銘柄やキッコーマンとの取引関係は確認しておらず、本人の食事・訪問記録ではありません。

食卓では「おいしそう」で楽しめる一皿も、企業分析では「どの商品が、どこで、どんな条件で売れたのか」を一段掘り下げます。写真の料理から特定企業の売上や需要を推定することはできませんが、身近な食べ物が決算を読む入り口になるのは面白いですね。

次の決算で確かめたいこと

資料を開いたら、まず期間をそろえ、その次に「円換算か、為替差を除いた数字か」をメモしてみてください。違う条件の伸び率を混ぜなければ、前回との比較がずっと楽になります。

そのうえで、気になる事業の説明から数量、価格、商品構成の手がかりを探します。資料に分解がなければ、分からない点として残しておけば大丈夫。自分で無理に理由を一つに決める必要はありません。

為替が反対方向に動けば、円換算の見え方も変わり得ます。また、為替差を除いて売上が増えていても、費用や利益、株価まで同じ割合で伸びる保証はありません。数字を一つ見つけたら、何が含まれ、何がまだ分からないかをセットで考えたいですね。

一つの数字で結論を急がず、次は数量や価格の説明を探してみてください。見つからなかった点も、立派な確認メモですよ。

比率の分母を確認する練習にはユニクロの海外比率の記事、売上と費用の関係にはJR東海の収入と費用の記事もどうぞ。今回はそこに「換算条件」という確認項目を足しました。

公表済み資料を使った学習・企業分析です。特定銘柄の購入推奨や将来リターンの保証ではありません。本人の保有・取引・訪問体験は記していません。