新幹線のにぎわいと利益は別?JR東海で読む「収入−費用」の決算
今回の教材:JR東海の2027年3月期第1四半期決算。対象は2026年4月1日〜6月30日、公表日は2026年7月31日です。この過去の四半期を使って決算の読み方を考えます。公開日現在の最新業績を速報する記事ではありません。
新幹線のホームに人が多いと、「これだけ利用されているなら、鉄道会社の利益も増えそう」と感じますよね。ただ、きっぷが売れる一方で、列車を走らせるための支出もあります。にぎわいの先に何が残るのか、決算で確かめてみましょう。
JR東海(東証・9022)の2026年4〜6月期は、連結の営業収益が前年同期比3.0%増、営業利益は0.9%減でした。収益が伸びたのに、利益は少し減っています。この違いを、事業の収益と費用に分けて見ていきます。

収入・費用・利益を3本の棒で
営業収益は、事業から得た収益の大きさを見る数字です。そこから事業にかかった営業費用を引いたものが営業利益。大づかみには営業収益−営業費用=営業利益と考えられます。現金の入出金そのものとは異なる点も、頭の片隅に置いておきましょう。
前年同期をそれぞれ100にそろえると、今回の動きが見やすくなります。収益は103.0、費用は106.4、営業利益は99.1。収益が増えても、費用の増え方がそれを上回ると、残る利益は減ることがあります。
棒の長さは「伸び率」、表は「金額」です。まず単位を見てから比べると、読み違いを防げますよ。
| 項目 | 2025年4〜6月 | 2026年4〜6月 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 478,283 | 492,716 |
| 営業費用 | 257,057 | 273,551 |
| 営業利益 | 221,225 | 219,165 |
出典:JR東海・2027年3月期第1四半期 決算短信の公式英訳(5ページ)。百万円未満切捨て。表示値の差引きには端数処理による差があります。図の伸び率は同・補足資料の公式英訳(2ページ)を使用。
指数の棒が似た長さでも、元の金額が同じとは限りません。前年の収益100と費用100は、それぞれ別の金額を100としたものです。「費用の棒が収益より長いから赤字」と読む図ではありません。表を見ると、当期も営業収益が営業費用を上回っていることが分かります。
費用は「減らせばよい」だけではない
公式補足資料は、営業費用増加の主な背景に、JR東海とグループ会社の人件費の増加などを挙げています。さらにJR東海単体の費用の説明には、昇給、修繕費の労務単価、システム関連費用などの増加が示されています。連結全体と単体の説明は、範囲をそろえて読みましょう。
鉄道は、列車を走らせる人、線路や車両の保守、運行を支える仕組みがあって成り立ちます。費用が増えたという理由だけで「すべて無駄」と決めつけると、必要な支出まで見落とします。反対に、必要な費用だから利益への影響を見なくてよい、というわけでもありません。
ここで小さな仮例です。収益100、費用60なら利益は40。次に収益が103になっても、費用が64なら利益は39です。収益は増えたのに、利益は減りました。これは計算の仕組みを示す架空の例で、JR東海の金額・将来予想ではありません。
費用が増えたときは、金額だけで決めつけず、中身の説明も読んでみてください。必要な支出かを考える手がかりになります。
列車の外にもあるグループの仕事
乗車前に売店で飲み物を買う、駅の商業施設で食事をする。旅の準備を思い浮かべるだけでも、きっぷ以外にお金を使う場面がありますね。JR東海の連結決算には、運輸業に加えて流通業、不動産業、その他の事業が含まれます。今回の補足資料では、百貨店・駅構内店舗の売上や、駅商業施設の賃貸収入などにも触れています。

ただし、連結の営業収益をすべて「新幹線のきっぷ代」と置き換えてはいけません。決算を読んでからホームを見ると、「列車以外の仕事はどこにあるだろう?」という別の楽しみ方もできますね。写真に写った施設の売上を、この表から個別に取り出せるわけではありません。
駅で気になったら、次はここを読む
ホームで見かけた混雑が気になったら、まず比較している期間を確かめてみてください。金曜の夕方と平日の昼では、人の多さも違います。一度の印象を、そのまま四半期全体の業績には置き換えられません。
費用の説明では、次の期にも続きそうな支出かを考えると、数字を追いやすくなります。人件費、修繕、システムと分けてメモしておけば、次の発表で「どこが変わったか」を比べられます。続くかどうかを資料から判断できなければ、確認したい点として残しておけば十分です。
もう少し読み進めるなら、利益と現金の違いにも目を向けてみましょう。車両を買うためにお金を払う時期と、その費用を減価償却費として少しずつ計上する時期は、一致するとは限りません。この第1四半期には四半期連結キャッシュ・フロー計算書が作成されていないことも公式短信に記載されています。営業利益だけを「自由に使える現金」と読み替えず、開示のある期間のキャッシュ・フローや設備投資も合わせて確認するのがよさそうです。
次の決算に向けて、気になった費用を一つだけメモしておくのもおすすめです。前回との違いを見つけやすくなります。
にぎわいを見つけたら「収益は?」、その次に「費用は?」。この二段階の問いを持つだけで、鉄道会社の決算はぐっと立体的になります。事業を理解する面白さと、株価が将来どう動くかは分けて考えましょう。
割合の読み方はユニクロの海外比率の記事でも練習できます。別の企業も個別株投資の記事一覧からどうぞ。
本記事は公表済み資料を使った学習・企業分析です。特定銘柄の購入推奨、株価や利益の将来保証ではありません。本人の保有・乗車体験・売買実績を記した記事ではありません。