任天堂株、売上減でも営業利益は約2.5倍?決算で見たい「一時要因」と事業の中身
今回分析するIR:任天堂の2027年3月期第1四半期決算。対象期間は2026年4月1日〜6月30日、公表日は2026年8月6日です。この四半期の実績を題材に、利益の中身を読み解きます。
「売上は減ったのに、利益は増えた」。決算でこんな数字を見つけると、少し不思議ですよね。任天堂(東証・7974)の2027年3月期第1四半期も、その一例です。
対象は2026年4〜6月。売上高は前年同期比9.5%減、営業利益は150.5%増でした。今回は、数字の大きさに驚くだけで終わらず、利益を押し上げた要因と、ゲーム事業の動きを分けて見てみます。購入や保有の報告ではありません。

売上も利益も、一緒に動くとは限らないんだね。まずは数字を並べてみよう。
売上は約5,178億円。利益はどう変わった?
8月6日公表の決算では、営業利益が前年同期の約569億円から約1,425億円へ増えました。「150.5%増」は、前年の約2.5倍という意味です。売上は減っているので、同じ割合で伸びたわけではありません。
| 指標 | 前年:2025年4〜6月 | 今回:2026年4〜6月 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,723億円 | 5,178億円(−9.5%) |
| 営業利益 | 569億円 | 1,425億円(+150.5%) |
| 営業利益率 | 9.9% | 27.5% |
出典:任天堂2027年3月期第1四半期決算短信p.1、決算説明資料p.3(いずれも2026年8月6日)。表の金額は会社説明資料の億円・整数表示、増減率と利益率は同資料の公表値です。
営業利益率は、売上に対して営業利益がどれだけ残ったかを見る指標です。ただし、率が大きく上がったときほど「次の四半期にも続く理由なのか」を確認したいところです。
利益を見るときは、約3億米ドルの関税還付にも注目
決算説明資料には、IEEPA関税の還付に伴い、約3億米ドルを売上原価の減額として計上したとあります。会社は、この関税を主として販売価格に転嫁せず、自ら負担していたと説明しています。
売上原価が減れば、利益を押し上げる方向に働きます。つまり、営業利益の伸びをすべて「ゲームの売れ行きが強くなった結果」と読むことはできません。今回のような還付を、通常の販売活動による利益と分けて眺めるのが大切です。
増益はうれしい数字。でも「毎回ある利益なのかな?」を一度立ち止まって考えたいね。
ここでは、3億米ドルを手元の為替レートで円に換算して、営業利益から引く計算はしません。実際の計上に使われた条件を確認しないまま差し引くと、独自の「調整後利益」を正しい会社数値のように見せてしまうためです。
公表された営業利益は実績として受け止め、その伸びを次の四半期へそのまま延長しない。この二つは両立します。
ゲーム機の台数と、ソフトの本数も別々に見る
任天堂はゲーム専用機のハードウェアとソフトウェアに加え、映像・ライセンスなどのIP関連収入もある会社です。好きなゲームを知っていることは調べる入口になりますが、そのまま株価の割安さを示すものではありません。

今回の説明資料では、Nintendo Switch 2のハード販売は382万台で前年同期比34.4%減。一方、同機向けソフトは946万本で9.2%増でした。会社は、ハードの比較対象が発売時期に当たる前年同期だったことも説明しています。
本体は一度買うとしばらく使い、そのあと遊びたいソフトを買い足す、という見方をすると数字を追いやすくなります。ただし、台数と本数だけから利益を計算することはできません。製品構成や価格、原価なども関わるからです。
「本体が減ったから全部不調」「ソフトが増えたから安心」と一つの数字で決めず、何を比べているのかをそろえて確認しましょう。販売データは会社資料のセルインで、当社グループからグループ外への販売を指します。
次の決算で確かめたい、3つの問い
任天堂のIRカレンダーでは、第2四半期決算発表は11月5日を予定しています。予定は変わることがあるので、発表前には公式カレンダーを確認してください。
- 利益の中身:還付などの影響と、継続的な事業の変化を分けて説明できる?
- 販売の広がり:本体とソフト、それぞれの販売はどう動いた?
- 見通し:実績を見て、会社の通期予想や前提は変わった?
リスクとしては、遊びたいソフトの人気が想定に届かないこと、ハードの販売や原価、為替・関税などの変動が挙げられます。四半期の増益だけで、翌期の利益や株価の上昇を保証することはできません。
次の発表では、利益の理由がどう変わったかを見てみよう。
決算は、点数を一つ付けるより「次に確かめたいこと」を見つける読み物。売上と利益の向きが違ったら、その間にある理由を一つ探してみる。それだけでも、見出しの印象から少し離れて会社を眺められます。
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- 任天堂 2027年3月期第1四半期決算短信
- 同 決算説明資料p.3〜5:関税還付、売上の構成、販売台数・本数とセルインの定義
- 任天堂 IRカレンダー
資料確認日:2026年10月27日。本文の実績対象は2026年4〜6月です。会社の予想や次回発表結果を先取りしていません。
一般的な企業研究で、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。株価下落などにより損失が生じることがあります。吹き出しの人物はブログ用の架空のイラストです。